Street Cry! Supreme!
Nad Al Shebaの直線で実況が放った言葉である。
初年度産駒の活躍によってStreet Cryは種牡馬としても優れた素質を持っていることを示した。しかし年が明けて以降の目立った活躍は新星Zenyatta程度のものとなってしまい、Kentucky Derby Trailにおいても駒を得ているとは言い難いが、異色の経歴で参戦するTomcitoには期待が掛かるところ。
さて、種牡馬を評価する指標の一つとしてアーニングインデックスによるリーディングを見てみる。ネタ元は毎度のように
Blood-Horseである。
Rank | Stallion | Stake Winners | Graded Stake Winners | GI Stake Winners | AEI | CI | 2008 Fee |
1 | Storm Cat | 160 (12.9%) | 98 (7.9%) | 32 (2.6%) | 3.37 | 3.61 | 300,000 |
2 | A.P. Indy | 110 (12.4%) | 64 (7.2%) | 21 (2.4%) | 3.21 | 3.83 | 300,000 |
3 | Street Cry | 16 (7.4%) | 12 (5.6%) | 5 (2.3%) | 3.1 | 2.24 | 100,000 |
4 | Smart Strike | 51 (8.2%) | 26 (4.2%) | 7 (1.1%) | 2.82 | 1.97 | 150,000 |
5 | Awesome Again | 27 (5.7%) | 18 (3.8%) | 9 (1.9%) | 2.65 | 2.26 | 150,000 |
6 | Seeking the Gold | 82 (9.7%) | 46 (5.5%) | 17 (2.0%) | 2.61 | 3.26 | 125,000 |
7 | Distorted Humor | 56 (10.2%) | 24 (4.4%) | 10 (1.8%) | 2.52 | 1.88 | 300,000 |
8 | Kingmambo | 73 (9.4%) | 45 (5.8%) | 20 (2.6%) | 2.51 | 3.01 | 250,000 |
9 | Theatrical | 73 (7.9%) | 50 (5.4%) | 20 (2.2%) | 2.42 | 2.45 | 40,000 |
10 | Rahy | 78 (8.3%) | 38 (4.0%) | 12 (1.3%) | 2.41 | 2.09 | 60,000 |
Blood-HorseのAEI集計基準は生涯成績であり、その対象は現役の北米供用種牡馬となり、2004年以前に北米を去った種牡馬は除外される。また、産駒が150頭に満たない種牡馬も集計されない。
上位には種付け料が10万ドルを上回る種牡馬が勢揃いする見応えのあるラインナップであり、Theatrical、Rahyにしても今でこそこの金額に落ち着いているが、一時はどちらも10万ドルのプライスタグが付けられていた。
これらの種牡馬が優れているのは確率である。ステークス馬を出す確率、重賞馬を出す確率、GI馬を出す確率のそれぞれにおいて種牡馬毎の特徴のようなものはあるものの、概ね他の種牡馬と比較して優れた値を叩き出している。
その3つの数値でコンスタントに高いStorm CatとA.P. Indyについては北米を代表する種牡馬というだけの価値はあるということになるだろうか。どちらもAEIがCIに追いついていないというのはあるかもしれないが、これだけCIが高くなってしまうと辛いものがあるだろう。A.P. IndyのCIは毎年低下している。2001年のデータだとCIが4.73というとんでもない種牡馬だったわけであるし。
Street Cryについては既に今年競争年齢に達した産駒までが母集団に含まれているので、パーセンテージはやや低く出ていると思われる。AEIはStreet Senseのおかげでブーストされている部分はあるが、ステークス馬、重賞馬の数が実質2世代でこれだけというのは驚異的な数字であり、早仕上がりで欧州芝でもという産駒のタイプはStorm Catに通じるものがある。遠からず種牡馬を引退するであろうStorm Catのカテゴリーを手に入れるのはStreet Cryなのではないかという予感がある。
Smart Strikeについては評価が急上昇したのが最近であって、まだこれから結果を積み上げていくべき種牡馬という位置づけではあるだろう。GI馬が7頭(1頭はプエルトリコ)だが、コンスタントに出している。2004年から産駒数が急に増えるので、今が勝負どころということになる。
Awesome Againの場合はステークス馬率はかなり見劣りするが、そこからGIまでが驚異的。何かと偏ったところのある種牡馬である。
Seeking the Goldは毎年の産駒が50頭から60頭で安定していて絶対数でやや少なく、獲得賞金ベースでは上位に出てこないが、それぞれで見ればしっかり稼がせているというタイプ。とは言うもののGI級の牝馬を次々に出していた頃に比べるとやや落ちてはいる。ただ、相変わらずYearlingに産駒が上場されると、牝馬が牡馬の倍近い金額で落札される異常な種牡馬である。この境地にはAwesome Againですら辿りつけていない。
Distorted HumorはSmart StrikeにおけるCurlinやEnglish Channelのような大物を持たないが、ステークス馬率が10%台と素晴らしい。Funny Cideは大物であったようには思うのだが…
Kingmamboは何と言ってもGI馬率でStorm Catに匹敵するということになる。ステークス、重賞でも悪い数字ではないが、印象としてはかなり薄い。おそらく欧州で勝っているのが多いためだろう。
TheatricalとRahyに関しては流石の実績というしかないか。どちらも北米にあって芝を得意とするタイプであるが、Theatricalはよりストイックである。北米を拠点として毎年ある程度の産駒を送り出す中でコンスタントに芝の賞金が80%を超えてくる様は世界が違うとしか言いようが無い。20頭のGI馬を出しているが、ダートのGIを勝てたのはわずかに3頭である。一方RahyはTheatricalほどに極端ではないのだが、GIクラスとなると2/13なのだから大して変わらない。
なおGI馬数も含めてBlood-Horseはプエルトリコやトリニダードトバゴなどの結果も集計しているので、思い当たるより多めに出ている場合がある。このクラスになるとそう流れて行く馬は多くないが、GI馬ではSmart Strike、Street Cry、Distorted Humorで確認できる。Distorted Humorを見る限りマレーシアでは勘定に入れてもらえないようだ。
GI馬をざっと見ていくのは次回ということにして、これら以外の種牡馬はどうか。
このリストから既に名を消している種牡馬では何と言ってもDanzigである。AEI4.12を叩きだし、ステークス馬は194頭、率にして18.5%とStorm Catですら全く及ばない。GI馬も46頭と凄まじいものがある。Nureyevもステークス馬率17.5%という素晴らしい数字を持っている。Mr. Prospectorは大体15%ということでその下に位置し、Seattle Slewが13%程度。
10位以下の種牡馬からピックアップしてみると、11位Cozzene、12位DynaformerとRahyあたりとほぼ差の無い数字を持つ種牡馬が並ぶ。RahyはFantastic Light、Serena's Songという大駒を有していたというあたりが利したかとは思われる。
13位のPulpitなども悪くない数字が並ぶ。この種牡馬は3年目にずっこけて評価が急落したが、その後立て直してきたとは言える。Pyroの活躍次第では更に上昇するのではないか。
17位にはUnusual HeatとPoint Givenが並んでいる。Unusual Heatは以前も取り上げたが、産駒の活躍で評価を高めてきている種牡馬である。CI1.09に対してAEIが2.07というのを見ると非常に優れた種牡馬であることが分かる。Point GivenについてはAEIが2.07もあることに驚いたが、ステークス馬3.9%程度では少なくともPoint Givenという競走馬に対して掛けられた期待に種牡馬Point Givenは応えられなかったとはなるのであろう。オールウェザーという時代の要請に上手く応えている種牡馬の1頭ではあるが、そのスケールにまで落ちぶれてしまったか。
Gone Westは26位と振るっていない。GI馬13頭を出しているのに、同じようなキャリアのRahyやSeeking the Goldに対してここまで差を付けられていたかとは思う。とにかくRahyに於けるFantastic Light、Serena's Song、Seeking the GoldのDubai Millennium、Seeking the Pearl、Heavenly Prizeのような大物が思い当たらない。Zafonic程度か。Came Homeも大物になれそうでならなかったくらいに。後は短距離に目をやってSpeightstownとかもいるが、つまりはそういうことなのだろう。欧州の芝で走らせることもできるが、わざわざGone Westにしなくてもそっちならもっと優れた種牡馬がいたし、器用貧乏的なところはあったか。それでも種牡馬としての人気はあって一時的に種付け料が15万ドルまで上昇した大種牡馬であった。とにかくGone Westの場合はAEIの低下が止まらないという状況である。Mr. Prospector X Secretariatという血統構成が現状やや使いにくいのではなかろうか。そしてどうにもSecretariatを上手く使えていない印象はある。血統が完成していたSpeightstownくらいか。
さてGiant's Causeway。ランクは25位。CIが3.60に対してAEIが1.99は厳しいものがある。世代当たりの産駒数が100頭を超えることがこうした集計では足を引っ張る結果になっているのではないかとの印象は拭えない。実質4世代でGI馬7頭を出しているのだから文句は出ないはずだが、率にして1.1%にしかならない。この1.1%はSmart Strikeのものと意味合いが違うのは言うまでも無いことで、種付け頭数を多くしすぎて種牡馬価値を損ねてしまった例となってしまったのではないか。Storm Catは毎年100程度の種付け数であったし、A.P. Indyもそれよりやや多い程度で一世代で100頭を超える産駒が出たのは2001年に102頭が登録されたときに止まる。これに対してGiant's Causewayは最初の2年でそれぞれ150頭程度の産駒がいる。種付け料の高騰などもあってかその後は減っているが、最初の2年はそれだけ産駒がいればそれくらい勝って当然かと思ってしまう数字である。その後産駒が減った以上に活躍馬が減っているのは気になるが、古馬になって活躍する馬は多いので、今後多少の数字の改善はあるのだろうと思われる。