ハイフライヤー系の衰退によって20世紀初頭にはイギリスからヘロド系の種牡馬がいなくなりました。
イギリスでのヘロド系復興を担う存在としてフランスからイギリスに輸入されたのがロイヘロド(ROI HERODE)、フランス風に読むとロワエルド、です。
ロイヘロドの血統はヘロドの仔ウッドペッカーからバザード(BUZZARD)の産駒カストレル(CASTREL)に受け継がれてフランスに渡った血統です。
ロイヘロドはザテトラーク(THE TETRACH)を輩出して期待に応えます。
ザテトラークはスピードに優れており、2歳のみ現役として活躍し、スプリント戦で圧勝を繰り返しました。
種牡馬としてもスピード豊かなスプリンターを多く輩出していますが、セントレジャーを勝つような長距離馬も輩出しています。
ザテトラークは種牡馬入り当初から高く評価され、また非常に人気のある種牡馬でしたが、種付けを嫌うそぶりを見せ、受精能力にも問題があったためその産駒は130頭と25歳の長寿を全うしたわりには少ないものとなっています。
ザテトラークの後継種牡馬となったテトラテーマ(TETRATEMA)も典型的なスプリンターでした。
テトラテーマの産駒は明らかな距離の限界を示したためザテトラーク系はスプリント血統として確立されました。
テトラテーマの産駒には輸入種牡馬のセフト(THEFT)がおり、戦後の日本の競馬に大きな影響を与えました。
このセフトの産駒に10戦無敗で日本ダービーを制した後、破傷風がもとでこの世を去った幻の名馬トキノミノルが出ています。
トキノミノルはザテトラーク3×4という奇跡の血量のインブリードを持っています。
現在クラシックの重要なステップレースである共同通信杯にはトキノミノル記念という名が与えられています。
ザテトラークの直系はスプリント血統の宿命には逆らえず衰退の道を歩み、絶えてしまいました。
ザテトラークの最高傑作と呼ばれるのが牝馬マムターズマハル(MUMTAZ MAHAL)です。
母にレディジョセフィン(LADY JOSEPHINE)を持つこの牝馬はゲインズボロー(GAINSBOROUGH)との間にマーマハル(MAH MAHAL)を産みました。
マーマハルはブレニム(BLENHEIM)の後継種牡馬となったマームード(MAHMOUD)の母でマームードからはアルマームード(ALMAHMOUD)が出てノーザンダンサー(NORTHERN DANCER)やヘイロー(HALO)の牝系になっています。
マムターズマハルはブレニムとの間にもマムターズベガム(MUMTAZ BEGUM)を産み、こちらはナスルーラ(NASRULLAH)の母で、他にロイヤルチャージャー(ROYAL CHAGER)の母であるサンプリンセス(SUN PRINCESS)を産んでいます。
またロイヘロド-ザテトラークは芦毛中興の祖と呼ばれ、多くの芦毛の馬の血統をたどるとザテトラークあるいはロイヘロドにたどり着きます。
なかでもマームードは史上3頭目の芦毛のイギリスダービー馬でレコードタイムをたたき出しています。
このように直系としては絶えてしまいましたが、ザテトラークの血は現代の大種牡馬に受け継がれてスピードを与える働きをしています。