Am Ende der Geschichte: 物語の終わりに
2年に渡るディープインパクトの物語はこの有馬記念を以ってひとまず終焉を迎える。第二幕が彼のこの現役馬としての輝きに匹敵するかどうかはともかく、現役馬としての物語の幕を綺麗に下ろしてもらいたいというのが正直な気持ちではあるかな。馬名 | 父 | 母 | 母父 | 騎手 | 調教師 | |
1 | ポップロック | エリシオ | ポップス | サンデーサイレンス | O. ペリエ | 角居勝彦 |
2 | デルタブルース | ダンスインザダーク | ディクシースプラッシュ | Dixieland Band | 岩田康誠 | 角居勝彦 |
3 | ドリームパスポート | フジキセキ | グレースランド | トニービン | 内田博幸 | 松田博資 |
4 | ディープインパクト | サンデーサイレンス | ウインドインハーヘア | Alzao | 武豊 | 池江泰郎 |
5 | ダイワメジャー | サンデーサイレンス | スカーレットブーケ | ノーザンテースト | 安藤勝己 | 上原博之 |
6 | スイープトウショウ | エンドスウィープ | タバサトウショウ | ダンシングブレーヴ | 池添謙一 | 鶴留明雄 |
7 | コスモバルク | ザグレブ | イセノトウショウ | トウショウボーイ | 五十嵐冬樹 | 田部和則 |
8 | メイショウサムソン | オペラハウス | マイヴィヴィアン | ダンシングブレーヴ | 石橋守 | 瀬戸口勉 |
9 | トウショウナイト | ティンバーカントリー | ミッドナイトオアシス | Java Gold | 武士沢友治 | 保田一隆 |
10 | アドマイヤメイン | サンデーサイレンス | プロモーション | ヘクタープロテクター | 柴田善臣 | 橋田満 |
11 | スウィフトカレント | サンデーサイレンス | ホワイトウォーターアフェア | Machiavellian | 横山典弘 | 森秀行 |
12 | アドマイヤフジ | アドマイヤベガ | アドマイヤラピス | Be My Guest | 武幸四郎 | 橋田満 |
13 | ウインジェネラーレ | タマモクロス | マヤノカンパネラ | ヤマニンスキー | 蛯名正義 | 国枝栄 |
14 | トーセンシャナオー | サンデーサイレンス | ジョウノエンジェル | トウショウボーイ | 勝浦正樹 | 森秀行 |
Melbourne Cのワンツーでオセアニアを震撼させたデルタブルースとポップロックが並んで1枠を占める。デルタブルースは昨年の有馬記念、今年の天皇賞春と見るにどうにもGIになると頼りないという印象すら受けたのだが、オーストラリア遠征で見事に復活したと言って良いか。春の天皇賞のイメージから高速馬場に対応しないという意見も聞かれますが、3歳時のレースのイメージなら問題無いかと思われます。この馬の場合はダンスインザダーク産駒に一般的にみられるここ一番と言う舞台での勝負弱さというのをやっぱり抱えているんだろうという気もしますが。ポップロックに関してはMelbourne Cの2着とはいえ、デルタブルースとは大きな斤量差があってのものですから、デルタブルースと比較して一枚劣るというのは否定できないでしょう。今年になってから500万下から一気に駆け上がって4連勝で目黒記念を勝ちましたが、馬場が悪化したレースになったのがこの馬には向いたというところもあるかなと思われ、国内のトップクラスとぶつけるには厳しいのではないかなと。
菊花賞、JCと連続で2着に入ったドリームパスポートは菊花賞のあとはJCか有馬記念かどちらか一つという選択になりがちな3歳馬が多い中で破綻の無いレースを続けつつ両方に出走ということは褒められて良いのではないかなと。その上で今回ドリームパスポートがどこまでこなせるかというのは注目なのですが、押し切って勝つというところまでには行けそうもないか。割とこの手の安定感のある馬がシーズンの最後に息切れというパターンもあるだけに注意したいところではあるけど。
ディープインパクトは中山より東京の方が向いているのは確かだろうが、そんなことはディープインパクトにとっては今更といったことではあるだろうし、これほどの馬が苦手な舞台だからなどと言ってはいけないだろう。というわけでディープインパクトにとっては昨年2着に敗れて初めて土をつけられたこのレースをしっかり勝って終わる以外にない。レース後に引退式をやるという予定は実のところあまり歓迎しないが、圧勝して舞台を去ったシンボリクリスエスのように誰にも文句をつけられない強さを見せて去って欲しいものである。
天皇賞秋、マイルCSとGIを連勝してこの舞台に立つのがダイワメジャー。ここを勝てば変則ながら秋のGIを3連勝となる。ダイワメジャーにとっては距離をこなせるかどうかというのが最大のポイントになるだろう。有馬記念は2500mという距離の割にはスタミナを要求しないレースでもあるわけで、秋の天皇賞を勝てるくらいなら十分ではないかとは思われます。またダイワメジャー自身が2番手あたりで先行して抜け出すというパターンで勝つ馬だけに直線の短いコースは得意とする部類でしょう。ただ、最後の粘りという部分で距離の影響は受けるかも知れず、問題は先行するであろうアドマイヤメインのペースとどのタイミングでこれを処理して先頭に立つかというところに尽きるか。
有馬記念やJCを走りに来る牝馬は無条件で好きになる事にしているのでスイープトウショウの参戦は大歓迎。ではあるのですが、追い込んで勝負のスイープトウショウにとってはあまり嬉しくない舞台と相手ではあると思われます。好きだから馬券は買うけどなあ。
すっかり優等生になってしまったコスモバルクはJCの直線で見せた粘りは健在なものの、その一方で3歳の頃に持っていた怖さを失ったような印象も受ける。ややレベルの落ちたレースとはいえシンガポールで国際GIというタイトルを手に入れてきたことが、陣営に良い意味で力を抜けさせているのではないか。それがこの秋に見せている安定に繋がっているのなら皮肉なものだが、いろいろな形の展開への対応ができるようになったとはいえ勝ち切るところにまでは手が届かないのだろう。
二冠馬メイショウサムソンの秋シーズンは物足りない。菊花賞、JCと走ったが何よりもJCの直線入り口でディープインパクトにあっさり千切られているようではここで逆転をという期待は掛けづらい。それでもこの舞台に上るというのなら、二冠馬としての意地を一つ上の三冠馬たるディープインパクトにぶつけてくれば良いのかなとも。
トウショウナイトは秋になってから馬が変わったのかとも思われるようなところはあるが、基本的に秋から冬のこの手の距離を得意とする馬ではあるんだろう。アルゼンチン共和国杯を勝って、昔日経賞とかで2着していた頃の状態には戻ったということで良いかなと。ただ、それでこの舞台というのはやや敷居が高かろうなあとも。
香港から中1週のアドマイヤメイン。アドマイヤムーンは結果的に回避となったが、あっちは2000mに拘ったローテーションを踏めばいいかなとは思うのでアドマイヤメインで十分です。逃げてレースを作る役割を担いそうで、アドマイヤメインのペースでレースが決まるということになるのではなかろうか。ダイワメジャーは大人しくついていくだけだろうし、コスモバルクも今の様子なら突付きに来る馬もいなそうで望みどおりのペースを作る事はできるだろう。ただ、ダイワメジャーが大人しいのは4コーナーを回るまでではあるだろうし、何よりディープインパクトがいるとなれば少し早めに仕掛けてリードを可能な限り大きく取りたいとは思われ、そうなるとアドマイヤメインにとっては嬉しくない事態にはなるかと。
スウィフトカレントも距離に自信を持てるような馬ではないわけで、JCの結果というのがこの馬のレベルを示しているといって良いのではないかな。前で勝負できるダイワメジャーならともかくスウィフトカレントのようなタイプで勝負できるとは思えない。
日経新春杯後に骨折、復帰戦に予定していたアルゼンチン共和国杯にも出走できずに有馬記念で復帰となったのがアドマイヤフジ。4歳馬がディープインパクトとこのような状況のアドマイヤフジだけというのは確かに問題ではあるか。インティライミやシックスセンスが結果的につぶれてしまったという事情はあるし、トップレベルの層の薄さではあるだろうが。この1戦を以ってディープインパクトが引退となる以上、アドマイヤフジは来年奮起してもらわなければならない馬ではあるでしょう。長期休み明けになるとはいえ調教の調子が良さそうというのはプラスか。
タマモクロス産駒の最後のGIランナーになりそうなウインジェネラーレだが、その種のセンチメンタルを起想するに留まる。トーセンシャナオーも菊花賞とJCのレース振りでよくここに出走してきたなとは思えるが、まあそれはそれということで有馬記念だし良いじゃないかとかは思う。
日本競馬史上で2頭だけの無敗の三冠馬。シンボリルドルフも古馬初挑戦のJCに負け、海外挑戦のSan Luis Rey Sも敗退した。海外遠征においてディープインパクトが失格なら、シンボリルドルフは故障して引退に追い込まれるという失望を味わった。こうした部分で彼らは似ている。シンボリルドルフには有馬記念連覇があるが、その一方で秋の天皇賞で不覚を取った。ディープインパクトは4歳の内に海外遠征を行った。シンボリルドルフは計画こそあったものの軽い故障もあって実現できなかった。彼らの違いの出る部分である。しかしシンボリルドルフは古馬になって2度目の挑戦でJCを勝ち雪辱している。ならば、ディープインパクトも当然のように勝たねばならない。勝ってシンボリルドルフに並ぶ七冠馬にならなければならない。引退のこのレースを飾り、英雄は皇帝になるのだ。
ディープインパクトが負けることは考えられないというのではなく、どんな展開になろうとも負けて欲しくはないというのが本音である。ディープインパクトのキャリアにおいて2度目というのはこの有馬記念だけであり、最後にまたしても土をつけられてしまったならば、それは画竜点睛を欠くというやつである。初めて敗戦を経験したレースをその1年後に引退の花道とする事ができればこれもまたドラマであるし、ディープインパクト自身の歴史はもちろんのこと、有馬記念というレースの歴史にも深く刻み込まれることになるだろう。
Result
Turn the Wheel Again, A New Beginning, Another End
3コーナーから加速し、馬群の外を切り裂いて伸びるいつも通りのディープインパクトの競馬であった。これについていける者は無く、彼は最後のウイニングランを披露した。1.ディープインパクト: サンデーサイレンス - ウインドインハーヘア by Alzao
2.ポップロック: エリシオ - ポップス by サンデーサイレンス
3.ダイワメジャー: サンデーサイレンス - スカーレットブーケ by ノーザンテースト
4.ドリームパスポート: フジキセキ - グレースランド by トニービン
5.メイショウサムソン: オペラハウス - マイヴィヴィアン by ダンシングブレーヴ
6.デルタブルース: ダンスインザダーク - ディクシースプラッシュ by Dixieland Band
7.トウショウナイト: ティンバーカントリー - ミッドナイトオアシス by Java Gold
8.アドマイヤフジ: アドマイヤベガ - アドマイヤラピス by Be My Guest
9.アドマイヤメイン: サンデーサイレンス - プロモーション by ヘクタープロテクター
10.スイープトウショウ: エンドスウィープ - タバサトウショウ by ダンシングブレーヴ
11.コスモバルク: ザグレブ - イセノトウショウ by トウショウボーイ
12.スウィフトカレント: サンデーサイレンス - ホワイトウォーターアフェア by Machiavellian
13.ウインジェネラーレ: タマモクロス - マヤノカンパネラ by ヤマニンスキー
14.トーセンシャナオー: サンデーサイレンス - ジョウノエンジェル by トウショウボーイ
ラップタイム: 7.1 - 11.5 - 11.4 - 11.3 - 11.8 - 12.8 - 12.9 - 12.7 - 12.2 - 12.8 - 12.2 - 11.2 - 12.0
桁違いの33.8という上がりをマークして余裕の3馬身差。ある程度JCで勝負を付けてしまったという部分はあって(ディープインパクトが中山を苦手とするってのは追い込み脚質が向かない程度の話でしかないとは思ったわけですし)、この有馬記念は一年前の雪辱という側面が強く、また引退レースを勝ってターフを去るというのはディープインパクト物語にとって欠くべからざるピースではあったでしょう。結果、ディープインパクトはそれに応え、そしてデビューして以来2年間に及ぶ現役生活の幕を引いた。
スタートから行ったのはアドマイヤメインだが、他馬はこれに付き合わない。後続馬群はダイワメジャーが引っ張る形であり、これはこの秋の天皇賞、マイルCSとほぼ同様のパターン。ダイワメジャーという馬の能力もさることながら展開が味方するという部分は大きい。アドマイヤメインが速いペースで引っ張ったのはほぼ1000mあたりまでで、そこから1コーナーに差し掛かるあたりでペースを落としているというのがラップから読み取れるのだが、映像を見る限りではこの時点でも後続は差を詰めていない。このあたりの駆け引きがダイワメジャーの心得たところでもあるのだろう。結果的にダイワメジャーは脚を溜めることが出来た。向こう正面から3コーナーに入る地点になってこの差が詰まって、4コーナーまでのコーナーリングでダイワメジャーが先頭に立つものの、既にディープインパクトが外からいつも通りの次元の違う末脚を伸ばし始めていた。ダイワメジャーの通る内は止まらない馬場になっていたが、関係無く外から交わしていくディープインパクト。これまでにも何度も繰り返された光景はやはりここでも変わらなかった。抜け出したディープインパクトを差せる馬など無く、最後は流しながらのゴール。ダイワメジャーもこの舞台を走る中距離向き先行馬としてのセオリー通りの走りを見せて粘ったが、ポップロックの末脚に屈した。そしてドリームパスポートはダイワメジャーを交わせず4着。メイショウサムソンは早めに仕掛けてダイワメジャーと並ぶように直線を向いたが、結果5着に終わった。デルタブルースは前につけたが見せ場の一つすら作れないまま終わった。そのあたりは実にダンスインザダーク産駒らしいと言ってしまえばそうなるか。コスモバルクは前に行かず中団のやや後ろという印象すら受ける位置取りで、直線に賭けたのかと思いきや、その直線で見るべきものは無し。位置取りを間違ったと言えばそれまでなのかも知れないが、もうちょっと何とかできなかったかなあ。
ディープインパクトに関してはこれ以上言う事など無い。そのレーススタイルには少なからず批判があったが、彼の実力はその批判を黙らせる事が出来た。3コーナーからゴールまで伸び切れる問答無用の末脚。一頭だけ違ったスピードで4コーナーを回る姿に魅了される。それこそがディープインパクトであった。
さて、2着に来たポップロックは本格化していたということにはなるのだろう。それでもオーストラリアでの活躍は(僚友に比して)軽斤量であったことと、エリシオ産駒は向こうにこそ向いているという印象であっただけにこれは驚かされた結果でもある。この距離が最も得意であるといえばそうなるのではあろうが、それにしてもとは思わされる。ダイワメジャーは理想的な展開であり、これで3着なら仕方が無いとはいえる。
思うにこの有馬記念はアドマイヤメインを無視して(実際相手にされてなかったし)、ダイワメジャーこそがレースを引っ張った馬と考えれば、2001年の再現なのである。ダイワメジャーはトゥザヴィクトリーであり、ポップロックはアメリカンボスである。だからこそメイショウサムソンは5着でなければならなかった…とデムパ。
来年以降となればディープインパクトは去るが、ポップロック、ダイワメジャー、ドリームパスポート、メイショウサムソンが現役に残る。ポップロックはまだちょっと分からないかという部分があり、ダイワメジャーはまたマイル-中距離に戻るだろう。ならば来年の古馬の中心を張るべきなのはドリームパスポートとメイショウサムソンである。秋になり立場を逆転させたとはいえ、この最後にメイショウサムソンも春2冠馬としての矜持をぶつけにいったことは評価出来るし、仕上がってさえいればと思わせるに十分なものではあった。