ドバイから香港、そして日本へというアジアの国際競争サーキットはもう少しちゃんと整理されると良いんだろうが、どうしても宝塚記念の扱いが難しくなってしまうという部分はあるかな。マイルでDuty Free、Champion Mile、安田記念がほぼ理想的になるだけに、宝塚記念の開催時期ってのはこの側面からは遅い。ただ、国内的に見れば3歳馬出走の可能性とか安田記念からの参戦があるので、開催時期を動かすわけにも行かないんでしょうが。
さて、年末の香港Cの上位馬のうち、勝ったPrideは引退し繁殖入りしましたが、2着Admire Moon、3着Vengeance of Rainはそれぞれドバイ遠征を行い、当日の芝GIのタイトルを勝ち取っての香港凱旋となりました。これを迎え撃つ体勢になるのが同レース4着のViva Pataca。
Vengeance of RainはSheema Classicに出走したわけですが、香港からそのレースにチャレンジすべきはViva Patacaの方であるとは思っていました。Vengeance of Rainが2000mにおいて香港最強を名乗るならば、2400mにおいてはViva Patacaの方であったからです。Vengeance of RainがSheema Classicを勝ったとき、Viva Patacaの陣営は何を思ったのでしょうか。Vengeance of Rainの凱旋レースでもあるこのレースに彼らはM. Kinaneを呼び寄せてViva Patacaの手綱を託し、更にはステープルメイトViva Macauを用意するほどに念を入れてきました。 Vengeance of Rainは遠征帰りであるというところで、どの程度仕上げられているかでしょう。HKJCが割とはしゃいでいるので下手なレースは出来ないのですが、Viva Pataca陣営の本気を見るとやや分が悪くなるかなとは思います。
Admire Moonはドバイから香港に直行というローテーションで、2002年にAgnes DigitalがこれをやってEishin Presstonに撃墜されていましたが、このレースだけを見れば基本的にはそう悪いローテーションではないとは言えるでしょう。2ヶ国に渡っての出走になるので検疫の問題が無視できないこともありますし、本気で勝ちに来る選択ではあるはずです。ただ、あのAgnes Digitalでさえもその後1年のブランクを余儀なくされたという事もあって、負担の掛かる部分も無視できないのでしょう。まあ、今年日本で使うということを諦めて欧州に飛んだら面白くはあるんですけどねえ。
遠征馬が他にSheema Classic2着のOracle West、5着Sushisan、Duty Free4着のSeihaliならば、昨年Irridescenceを勝たせたde Kock師のOracle West程度が強敵とはいえ、Vengeance of RainとViva Patacaの香港2騎が最大の敵であり、今年のDerby馬であるVital Kingはその地元2頭とAdmire Moon、Oracle Westとドバイで実績を挙げてきた遠征馬2頭を相手にどこまでのレースを見せられるかという事になりそうか。
Viva MacauはフランスでPrix Daphnisを勝っているDilekです。父Sendawarに母父Doyounというだけでもはっきりとしますが、かのBoussac由来の13-c族でDarshaanとDiyawaraでやや弱いながらもMill Reef、Abdos、Alvanillaが相似形を形成してクロスする如何にもAga Khanといった風な血統を持っています。Derbyでは9着と大敗しましたが、Trialは2着でしたし、もう少し先があるかなと思われる部分もあります。さすがにここで何とかなるとは思えませんけど。
2.Vengeance of Rain: Zabeel - Danelagh by Danehill
3.Admire Moon: End Sweep - My Katies by Sunday Silence
4.Sir Ernesto: Danehill - Brise de Mer by Bering
5.Sushisan: Fuji Kiseki - Meine Tochter by Bataan
6.Oracle West: Western Winter - Noble Prophet by Noble Ambition
7.Vital King: Almutawakel - Wauwinet by Bassenthwaite
8.Supreme Gains: Anabaa - Zebizan by Zabeel
9.Viva Macau: Sendawar - Diyawara by Doyoun
10.Seihali: Alzao - Edwina by Caerleon
周到にドバイ勝ちの2騎を迎え撃つ体勢を整えて挑んだViva Patacaがきっちりと勝った。Vengeance of Rainを直線で楽に交わした様はさすがとしか言いようのないものではあった。ただ、やはりVengeance of Rainらが遠征から1ヶ月でのレースということもあったし、Viva Macauを用意して、Vengeance of Rainの前でレースをさせたというあたりの作戦勝ちの側面も否定する事は出来ないかと思う。逆に言えばこれだけの勝負レースにしておいて負けなくて良かったという気持ちもどこかにある。条件は何もかもViva Patacaに向いていたし、これで負けたら相当ガックリ来ただろう。こういう局面でしっかりと仕事をするM. Kinaneもさすがではあった。
そのVengeance of Rainも直線で手応えが悪かった時は惨敗を覚悟しなければならなかったかとも思えたが、そこからちゃんと2着を確保したのだから非凡だし、香港の2000mに君臨する王者としての輝きを見せたとは思う。ドバイ遠征直後のレースは難しいというのはどこの馬にも言えることではあるし、疲労が溜まっているようなら無理せず、今年後半のキャンペーンに賭けてくれたほうが面白そうです。
Admire Moonもドバイからの転戦で、困難さはVengeance of Rain以上ではあったろうし、Sha-Tinの2000mで大外を引くという不運もあった。スタート直後にチャンスがあればどこかで内に入れようとはしたような場面はあったが、結局スローになりやすい香港のこの距離のレースでは3コーナーから外外を回すしかなくなったし、厳しいレースになったのは仕方ないかと思う。ただ、馬体の出来が落ちていたようなのでそのあたりも影響したか、直線での伸びがいまいちであったようにも見えた。
その他のドバイからの転戦馬ではSushisanがAdmire Moonに釣られるように伸びていた、というよりAdmire Moonがちょっと直線に入って鈍いという印象だったが、のは評価が出来るかなと。Oracle Westあたりは勝負に絡めなかったが、2400mないと厳しいのだろうか。
香港勢としてはレースを引っ張ったSir Ernestoが面白い馬になった反面、ダービー馬Vital Kingの案外さというのも目に付いてしまったか。ちょっと2頭とは差があるので、この先の香港の2000m級のレースはViva Patacaで支えるということになりそうか。
No. | Post | Horse | Sire | Dam | Broodmare Sire | Jockey | Trainer |
1 | 10 | Admire Moon | End Sweep | My Katies | Sunday Silence | Y. Take | H. Matsuda |
2 | 8 | Vengeance of Rain | Zabeel | Danelagh | Danehill | A. Delpech | D.E. Ferraris |
3 | 5 | Oracle West | Western Winter | Noble Prophet | Noble Ambition | W.C. Marwing | M.F. de Kock |
4 | 4 | Sushisan | Fuji Kiseki | Meine Tochter | Bataan | K. Shea | H. Brown |
5 | 3 | Seihali | Alzao | Edwina | Caerleon | J. Murtagh | D. Selvaratnam |
6 | 7 | Viva Pataca | Marju | Comic | Be My Chief | M. Kinane | J. Moore |
7 | 9 | Vital King | Almutawakel | Wauwinet | Bassenthwaite | B. Prebble | P. O'Sullivan |
8 | 6 | Sir Ernesto | Danehill | Brise de Mer | Bering | F. Coetzee | D. Cruz |
9 | 2 | Viva Macau | Sendawar | Diyawara | Doyoun | D. Beadman | J. Moore |
10 | 1 | Supreme Gains | Anabaa | Zebizan | Zabeel | D. Whyte | K.L. Man |
Vengeance of RainはSheema Classicに出走したわけですが、香港からそのレースにチャレンジすべきはViva Patacaの方であるとは思っていました。Vengeance of Rainが2000mにおいて香港最強を名乗るならば、2400mにおいてはViva Patacaの方であったからです。Vengeance of RainがSheema Classicを勝ったとき、Viva Patacaの陣営は何を思ったのでしょうか。Vengeance of Rainの凱旋レースでもあるこのレースに彼らはM. Kinaneを呼び寄せてViva Patacaの手綱を託し、更にはステープルメイトViva Macauを用意するほどに念を入れてきました。 Vengeance of Rainは遠征帰りであるというところで、どの程度仕上げられているかでしょう。HKJCが割とはしゃいでいるので下手なレースは出来ないのですが、Viva Pataca陣営の本気を見るとやや分が悪くなるかなとは思います。
Admire Moonはドバイから香港に直行というローテーションで、2002年にAgnes DigitalがこれをやってEishin Presstonに撃墜されていましたが、このレースだけを見れば基本的にはそう悪いローテーションではないとは言えるでしょう。2ヶ国に渡っての出走になるので検疫の問題が無視できないこともありますし、本気で勝ちに来る選択ではあるはずです。ただ、あのAgnes Digitalでさえもその後1年のブランクを余儀なくされたという事もあって、負担の掛かる部分も無視できないのでしょう。まあ、今年日本で使うということを諦めて欧州に飛んだら面白くはあるんですけどねえ。
遠征馬が他にSheema Classic2着のOracle West、5着Sushisan、Duty Free4着のSeihaliならば、昨年Irridescenceを勝たせたde Kock師のOracle West程度が強敵とはいえ、Vengeance of RainとViva Patacaの香港2騎が最大の敵であり、今年のDerby馬であるVital Kingはその地元2頭とAdmire Moon、Oracle Westとドバイで実績を挙げてきた遠征馬2頭を相手にどこまでのレースを見せられるかという事になりそうか。
Viva MacauはフランスでPrix Daphnisを勝っているDilekです。父Sendawarに母父Doyounというだけでもはっきりとしますが、かのBoussac由来の13-c族でDarshaanとDiyawaraでやや弱いながらもMill Reef、Abdos、Alvanillaが相似形を形成してクロスする如何にもAga Khanといった風な血統を持っています。Derbyでは9着と大敗しましたが、Trialは2着でしたし、もう少し先があるかなと思われる部分もあります。さすがにここで何とかなるとは思えませんけど。
Result
1.Viva Pataca: Marju - Comic by Be My Chief2.Vengeance of Rain: Zabeel - Danelagh by Danehill
3.Admire Moon: End Sweep - My Katies by Sunday Silence
4.Sir Ernesto: Danehill - Brise de Mer by Bering
5.Sushisan: Fuji Kiseki - Meine Tochter by Bataan
6.Oracle West: Western Winter - Noble Prophet by Noble Ambition
7.Vital King: Almutawakel - Wauwinet by Bassenthwaite
8.Supreme Gains: Anabaa - Zebizan by Zabeel
9.Viva Macau: Sendawar - Diyawara by Doyoun
10.Seihali: Alzao - Edwina by Caerleon
周到にドバイ勝ちの2騎を迎え撃つ体勢を整えて挑んだViva Patacaがきっちりと勝った。Vengeance of Rainを直線で楽に交わした様はさすがとしか言いようのないものではあった。ただ、やはりVengeance of Rainらが遠征から1ヶ月でのレースということもあったし、Viva Macauを用意して、Vengeance of Rainの前でレースをさせたというあたりの作戦勝ちの側面も否定する事は出来ないかと思う。逆に言えばこれだけの勝負レースにしておいて負けなくて良かったという気持ちもどこかにある。条件は何もかもViva Patacaに向いていたし、これで負けたら相当ガックリ来ただろう。こういう局面でしっかりと仕事をするM. Kinaneもさすがではあった。
そのVengeance of Rainも直線で手応えが悪かった時は惨敗を覚悟しなければならなかったかとも思えたが、そこからちゃんと2着を確保したのだから非凡だし、香港の2000mに君臨する王者としての輝きを見せたとは思う。ドバイ遠征直後のレースは難しいというのはどこの馬にも言えることではあるし、疲労が溜まっているようなら無理せず、今年後半のキャンペーンに賭けてくれたほうが面白そうです。
Admire Moonもドバイからの転戦で、困難さはVengeance of Rain以上ではあったろうし、Sha-Tinの2000mで大外を引くという不運もあった。スタート直後にチャンスがあればどこかで内に入れようとはしたような場面はあったが、結局スローになりやすい香港のこの距離のレースでは3コーナーから外外を回すしかなくなったし、厳しいレースになったのは仕方ないかと思う。ただ、馬体の出来が落ちていたようなのでそのあたりも影響したか、直線での伸びがいまいちであったようにも見えた。
その他のドバイからの転戦馬ではSushisanがAdmire Moonに釣られるように伸びていた、というよりAdmire Moonがちょっと直線に入って鈍いという印象だったが、のは評価が出来るかなと。Oracle Westあたりは勝負に絡めなかったが、2400mないと厳しいのだろうか。
香港勢としてはレースを引っ張ったSir Ernestoが面白い馬になった反面、ダービー馬Vital Kingの案外さというのも目に付いてしまったか。ちょっと2頭とは差があるので、この先の香港の2000m級のレースはViva Patacaで支えるということになりそうか。