9/10追記と誤字等訂正
内容が変わるようなことはしていません。
まずは、主観で引っ張り出した主な競馬場のリストでも。
- California
- Bay Meadows: 一年間導入延期
- Del Mar: Polytrack
- Golden Gate Fields: Tapeta
- Hollywood Park: Cushion Track
- Oak Tree→Santa Anita
- Santa Anita: Cushion Track
- New York
- Aqueduct
- Belmont Park
- Saratoga
- Florida
- Calder Race Course
- Gulfstream Park
- Tampa Bay Downs
- Kentucky
- Churchill Downs
- Ellis Park
- Keeneland: Polytrack
- Turfway Park: Polytrack
- Virginia
- Pennsylvania
- Presque Isle Downs: Tapeta
- Maryland
- Delaware
- New Jersey
- Meadowlands
- Monmouth Park
- Massachusetts
- Pennsylvania
- West Virginia
- Louisiana
- Fair Grounds
- Louisiana Downs
- Arkansas
- Illinois
- Arlington Park: Polytrack
- Hawthorne Race Course
- Iowa
- Texas
- Canada
- Fort Erie
- Woodbine: Polytrack
人工馬場の素材としてメジャーなものにPolytrack、Cushion Track、Tapeta、Pro-Rideがあり、この中で先行するPolytrackの採用例が多いです。一方Cushion TrackはHollywoodが導入し、Santa Anitaにも入りますから今後の発展はあるでしょう。TapetaについてはGolden Gate Fieldsへの導入が進められていますし、Presque Isle Downsで初の開催が行われているところです。Pro-Rideに関しては北米のメイントラックへの導入例はまだありません。
カリフォルニアは州の方針として2007年内と期限を切って人工馬場導入を主力5競馬場(Santa Anita、Hollywood、Del Mar、Golden Gate Fields、Bay Meadows)に義務付けていました。後に1年間の導入延期が認められましたが、これに対応できないとしたBay Meadowsに対しては開催停止をちらつかせるほどの強行な態度を取りました。こういった事情のもとでカリフォルニアにおける人工馬場導入が進んでいるわけで、北米の競馬場における人工馬場導入の広がりというものを考える際に、カリフォルニアのトラック(特に南カリフォルニアで西海岸サーキットを形成するSanta Anita、Hollywood、Del Mar)を取り上げて、北米で人工馬場導入が進んでいるといってしまうのはミスディレクションであるという印象を持ってしまいます。
Arlington ParkはCDIでの人工馬場導入のテストケースとしてPolytrackが導入されました。Arlingtonは主要なレースに芝のレースが多く、メイントラックに導入して様子を見るにはちょうど良い競馬場であったかとは思われます。このArlingtonへのPolytrack導入は概ね成功と言って良さそうな結果をもたらしたため、CDIがこれを見てどう判断するかというのは注目すべきなのでしょう。それでも導入するとしてもChurchill Downsは最後になりそうとは思いますが。
MECはカリフォルニアのSanta AnitaとGolden Gate Fieldsが導入済みであり、今後の開催で見極めていくのではないかな。どの素材を使うのかというのもあるだろうし、抱えているトラックが多いので導入費用もネックか。
一方Iowa州から人工馬場導入を要求されていたPrairie Meadowsは今すぐに導入する必要はないとの判断を下しました。ただし、この決定は将来に渡っての人工馬場導入を否定するものではなく、性急な結論を避けたものとも思われます。問題視されるのはやはり導入費用であり、カリフォルニアでの導入例から800万から1100万ドルという導入費用をどのように賄うかという事になるのでしょう。維持費用の低減はあるが、初期費用を調達できないなら話にならないわけで。
ダートトラックでも危険性はトラックコンディション次第とは思われ、Prairie Meadowsの件でも今年は荒天で馬場調整が困難で硬すぎる馬場になってしまった結果、例年より事故が多くなってしまったという事に触れられています。
今後の人工馬場の展開としてターニングポイントになるのは2008年のブリーダーズカップでしょう。既にSanta Anitaでの開催が決定しており、初めての人工馬場での開催となります。今年のHollywood春夏開催から、北米競馬において大きなウェイトを占める西海岸のメイントラックが人工馬場での開催になっていて、ブリーダーズカップの開催は大きな区切りとなります。既存のダートトラックと比較して人工馬場がどうかという評価はこのブリーダーズカップによって決定付けられるのではないかと考えています。肯定的な評価が出れば人工馬場導入が加速されるのではないでしょうか。
Polytrackは既にTurfway、Woodbine、Keenelandで実績を積んでいますが、Turfwayなどで気温の変動による影響を受けていたりと問題が出ていないわけではありません。特に寒くなるとあまり良くないようで、Turfwayで試行錯誤しているという印象です。結局のところダートと同じで、馬場が硬くなってスピードが出てしまうと危険性が高まるというのは変わらないのでしょう。Del Marの夏開催で重大事故が起きなかったのも、Polytrackの安全性もあるでしょうが、とにかく時計の掛かる馬場になっていたことも触れられてよいのではと思います。
Santa Anitaでは猛暑への適応と既にHollywoodが導入しているという観点からCushion Trackを導入しました。今後は人工馬場の素材による馬場差がどこまで出るのかというのが問題になってくるのではないでしょうか。Santa Anitaでの決定はそれに配慮しているように見えます。いずれにせよ、3つの素材のメイントラックが揃う事になるカリフォルニア州が壮大な実験場になるかなと。
ところで、北米のメイントラックが人工馬場化すると日本の芝馬の活躍が期待されたり、日本でもダートトラックを人工馬場にして北米との差が少なくなるのではないかと言われたりしますが、それほど簡単な話ではないと思います。
前者については今年になって芝馬のSilent NameがあっさりKeenelandのPolytrackでのCommonwealth BCを勝っている事もあって特にそう言われているように感じられます。しかし北米が人工馬場でやっていくというコンセンサスが取れれば、北米の生産者はそれにあった馬を生産するように変化していくでしょうし、調教師もそういったコースに合う調教方法を模索する事になるでしょう。それにその段階に到達するには人工馬場でのレースがこれまでのダートトラックでのレースとある種の継続性を持たせられるという事が前提になるのではなかろうかと考えます。Baffert師がDel Marの馬場に文句をつけたのもそういう観点だと認識しています。
後者についてはまだ北米で導入した各場での馬場差がどれくらいかも分からないのでどうとも言えない部分はありますが、気候(特に気温か)に合わせたチューニングというのは必要に見えますし、Del Marでは法規制で原材料がやや異なったりと同じ馬場条件を作り出すのは難しいでしょう。また、これまで日本馬が北米ダートへの遠征で結果を残せていないのは、北米競馬特有の消耗戦のレースそのものへの適応に問題があるように思われるわけですから、一概に馬場が変わったから近付くとも言えないでしょう。
今年からBlood-HorseはLeading Synthetic Siresというリストを作成しています。現状ではまだサンプルが少なく、参考になりませんが、今年後半のKeeneland開催、Oak Tree開催、Hollywood開催、Golden Gate開催のデータが入ってくると多少参考に出来るリストになってくるのではないかなと。現在はカナダを拠点としWoodbineで強いBold Executiveがリーディング。Bold n'Flashyなんかも上位にいるのでWoodbine開催の影響が大きいです。
追記(謝辞)
この件についての参考記事(主にBlood-Horseを中心とした過去記事)集として、umatoneko2さまのはてなブックマーク
競馬栞(競馬記事ブックマーク)内の
polytrack,人工馬場タグを参照のこと。
当記事の作成に於いても大いに参考にさせていただきました。もしumatoneko2さまのこのブックマークが無ければ、私は記事内容の確認のためにBlood-Horseの過去記事を検索しまくり、そのあまりの煩雑さに未完成のまま放り投げていたに違いありません(そういう経験は枚挙に暇ありません)。
深く感謝いたします。